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年の瀬の実家で見た、シニア犬と父の「ゆるい共同生活」から学ぶ独身会社員の終生飼養準備

モフユイナ編集部
取材・文: モフユイナ編集部 清水 編集部員
監修: 認定獣医師・第一種動物取扱シェルター長
calendar_today2026.10.23 公開 | update2025.10.14 更新
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保護80日目の朝・リハビリ完了
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保護から40日目、初めて自らスタッフの膝の上に顎を乗せて甘えてくれた瞬間。極度の緊張が解け、瞳に穏やかな光が戻った(世田谷シェルター兼一時預かり宅にて)

年末の実家で見つけた「小さな工夫」の数々

年末年始、久しぶりに実家へ帰った。玄関を開けると、14歳になる父の愛犬がゆっくりと顔を上げた。歩幅は狭く、目は少し白く濁っている。それでも父の後ろを、まるで日課の確認をするように、静かについてくる。台所の足元には滑りにくいマットが敷かれ、犬の寝床はホットカーペットの上に低反発クッションが重ねられていた。母が元気だった頃と比べ、家のあちこちが「犬のための家」に作り替えられている。

父は「特別なことは何もしていない」と言う。けれど、夜中に犬が起きる気配を感じると自分も目が覚めるようになった、と笑った。これは特別なことだ。高齢者世帯でシニア犬を終生飼養するというのは、こうした小さな気遣いの連続を、誰にも見られないまま続けることなのだろう。独身の会社員として、いつか自分の親や、あるいは自分自身が同じ立場になったとき、何を準備しておけばいいのか。帰りの新幹線で、そのことばかり考えていた。

高齢者世帯の終生飼養は「気合」より「仕組み」で支える

保護犬を迎えたいと考える独身会社員の多くは、まず「自分が飼えるか」を考える。だが視野に入れておきたいのは、実家の親が犬を飼っている、あるいはこれから迎える可能性だ。高齢者世帯の終生飼養は、気力や愛情だけでは続かない。仕組みが必要になる。

帰省時に確認しておきたい三つのチェックポイント

  • 動線のバリアフリー度:段差、フローリングの滑り、夜間のトイレの位置。シニア犬は足腰が弱ると、少しの段差で排泄を失敗する。滑り止めシートは百円均一でも買えるが、高齢者が自分で貼り替えるには手間がかかる。帰省のたびに補修しておきたい。
  • フードと薬の管理方法:高齢者は習慣で同じ量を与えがちだが、シニア犬は体重や腎機能で適量が変わる。一週間分を小分けにしたフードケースと、薬の飲み忘れを防ぐ曜日シールを用意しておくと、独り暮らしでも続けやすい。
  • かかりつけ獣医への連絡経路:診察券の保管場所、緊急時の電話番号、往診の可否。親のスマートフォンに獣医の番号を登録し、こちらからも同じ番号を共有しておく。年末年始は休診の動物病院も多いため、帰省中に一度、顔を出して挨拶しておくのが望ましい。

医療費と介護用品、お金の不安を「見える化」する

父の家計ノートを見せてもらった。犬の医療費は毎月定額を封筒に分け、名前をつけて保管していた。「これがなかったら、13歳のときに手術を決められなかった」と父は言う。高齢者世帯では、年金の範囲内で大きな出費を突然ねん出するのは難しい。だからこそ、若い世代が「見えない出費」を可視化する手伝いをする意味は大きい。

具体的には、シニア期に入った犬にかかる費用を三つに分ける。一つ目は定期健診と予防接種、二つ目は歯石除去や腫瘍の検査といった任意の医療、三つ目は介護用品だ。介護用品は、ペット用のスロープや抱き上げ用ハーネスなど、レンタルできるものも増えている。購入前に自治体の福祉用具貸与の対象にならないか、動物病院や地域のペットサポート窓口に問い合わせるとよい。年会費の安いペット保険に途中から入るのは難しいが、シニア犬向けの通院費補助制度を用意する自治体もある。帰省中に一度、地域の窓口を一緒にのぞいてみよう。

「もしも」のときに助けを呼べる関係をつくる

高齢者世帯の終生飼養で最も心配なのは、飼い主の入院や急な体調悪化だ。父は昨年、脳梗塞の疑いで一週間入院するかもしれない、という検査を受けた。そのとき、誰に犬を頼むかをあらかじめ決めていた。近所の犬好きの農家と、自治体の地域包括支援センター、そして私の携帯番号だ。地域包括支援センターは高齢者の見守りを担う窓口だが、ペットの一時預かりまでは対応しないことが多い。それでも、飼い主の緊急時に「犬がいる世帯」という情報を共有しておくだけで、支援の組み立てが変わる。動物愛護担当課と連携して「ペット同行避難」の訓練をしている自治体なら、なお心強い。

独身会社員の読者にとっては、自分の「身元引受先」を決めておくことも同じくらい大切だ。保護犬を迎える際、譲渡団体から「万が一のときの引受先」を聞かれることがある。親族に頼めない場合は、友人と書面を交わしておく、ペット信託を検討する、といった選択肢がある。年末の家族の会話の中で、こうした話を一度はしておくと、年明けの手続きが驚くほど滑らかになる。

年明けから始める、無理のない終生飼養の第一歩

帰省の最終日、父は犬の爪を切っていた。手元は少し震えていたが、犬はじっとしていた。慣れた手つきだった。高齢者世帯でも、道具と手順と、少しの助けがあれば、終生飼養は続けられる。大切なのは、完璧を目指さないことだ。散歩の距離が短くなっても、室内での遊びを増やせばいい。夜中の排泄が増えたら、吸水シートを増やせばいい。年の瀬に交わした小さな約束を、年明けの最初の週末に一つずつ実行に移す。それが、離れて暮らす家族と犬の暮らしを、静かに支える第一歩になる。

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