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帰省ラッシュの前に—保護犬と迎える初めての年末年始、"もしも"に備える静かな段取り

モフユイナ編集部
取材・文: モフユイナ編集部 清水 編集部員
監修: 認定獣医師・第一種動物取扱シェルター長
calendar_today2026.11.07 公開 | update2025.10.14 更新
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保護80日目の朝・リハビリ完了
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保護から40日目、初めて自らスタッフの膝の上に顎を乗せて甘えてくれた瞬間。極度の緊張が解け、瞳に穏やかな光が戻った(世田谷シェルター兼一時預かり宅にて)

年末年始は"いつもと違う"が三つ重なる時期

保護犬を迎えて初めての年末年始は、ふだんの暮らしが最も揺らぎやすい季節です。帰省や旅行で家を空ける予定、暖房に頼る寒さ、そして地震や停電がいつ起きてもおかしくない緊張感。この三つが同時に重なるのが、12月から1月にかけての特徴だと感じています。過去に犬と暮らした経験がある再チャレンジ層の方ほど、「去年までは何とかなった」という感覚が残っているものです。しかし保護犬の場合、迎えて間もない時期は環境の変化に敏感で、体調も行動も不安定になりがちです。経験値があるからこそ、今年は前提を一度リセットして備えることをおすすめします。

本稿では、帰省・留守番・災害という三つの場面を、時系列で整理します。特別な道具をそろえる話ではなく、家族の中で「誰が、いつ、何をするか」を決めておく話です。

帰省の二週間前までに決めておく「預け先の基準」

年末の予定が固まる12月上旬から中旬が、預け先を決める現実的な締め切りです。ペットホテルは12月に入ると埋まりやすく、初めての利用では事前の見学や試泊が必要になることもあります。ここで大切なのは、料金や立地より「うちの犬がどう過ごすか」を基準にすることです。

  • 預ける前に、必ず一度は施設へ犬を連れて行き、スタッフとの相性と滞在スペースの広さを見る
  • 「1日の散歩回数」「食事の回数と量」「排泄の記録の有無」を具体的に質問する
  • 初めての預け入れは、年末本番より前に半日から1泊の短い練習をする
  • 持病や服薬がある場合は、薬の名前と投与時間を書面で渡す

自宅に来てもらうシッター型を選ぶ場合は、鍵の受け渡しと緊急時の連絡先の確認を忘れずに。保護犬は慣れない人に触られることを怖がる場合があります。事前に短時間の顔合わせをしておくと、当日の負担がぐっと減ります。

預け先が見つからないときの現実的な選択肢

どうしても預け先が確保できない場合は、滞在日数を短くする、日帰り帰省に切り替える、家族の誰かが留守番に残る、といった調整も立派な備えです。「迎えた初年度は無理をしない」と決めておくことが、結果的に犬の健康を守ります。

留守番そのものを「練習」に変える年末の過ごし方

帰省中だけでなく、年末年始は家族が揃って家にいる時間が長く、その後急に日常へ戻る落差も問題になります。休み明けにいきなり長時間の留守番が始まると、分離不安のような行動が出ることがあります。そこで、休みの期間中から少しずつ「ひとりで過ごす時間」を練習しておきましょう。

  • 午前中に30分、午後に1時間など、短い不在をわざとつくる
  • 出かけるときと帰宅したときの挨拶は、大げさにせず淡々と
  • 留守番中に使う場所(クレートやサークル)は、居心地のよい寝床として普段から慣らしておく
  • 帰宅後に激しく甘やかすより、まず水と排泄の確認を優先する

この練習は、災害時の避難や急な入院にもそのまま役立ちます。落ち着いてひとりで過ごせる時間は、犬にとっての保険になります。

停電と断水を想定した「防災ポーチ」の中身

冬の災害で特に困るのが、暖房の停止と水の不足です。持ち出し袋とは別に、家の中に「犬用の防災ポーチ」を一つ用意しておくと安心です。中身は次のとおりです。

ポーチに入れておくもの

  • フードの小分けパック(3日分を目安に、普段と同じ銘柄で)
  • 折りたたみの水皿と、ペットボトルの水(1日あたり体重1kgにつき50ml程度を目安に計算)
  • 予備のリードと首輪、迷子札(連絡先が読める状態か確認)
  • 排泄シート、ウェットティッシュ、簡易トイレ袋
  • 常備薬と、かかりつけ動物病院の連絡先メモ
  • 寒さ対策のアルミ保温シートと、小さな毛布

これらは玄関近くの取り出しやすい場所に置き、半年に一度は中身を確認します。フードの賞味期限と薬の残数を、カレンダーの目立つ位置に書いておくのも効果的です。

避難所に入れない場合の行き先を決めておく

災害時、すべての避難所が犬を受け入れられるわけではありません。自治体の防災計画でペット同伴の可否を確認し、難しい場合の行き先を家族で話し合っておきます。車中泊の可能性があるなら、換気と寒さ対策の方法を事前に確認しておきましょう。

寒さ対策は「暖かくしすぎない」が合言葉

寒いからと室温を上げすぎると、犬は乾燥や暑さで体調を崩します。特に冬は暖房で空気が乾き、皮膚のかゆみや呼吸の違和感が出やすくなります。目安として、人が薄手の長袖で快適に感じる程度の室温を保ち、加湿を忘れずに行います。散歩は日中の暖かい時間帯を選び、地面の冷たさが強い日は短めに切り上げる。高齢の犬や小型犬では、腹を冷やさないように腹巻き型のウェアを活用するとよいでしょう。

また、年末年始は動物病院が休診になる期間があります。持病がある犬は、休診前に薬の残数を確認し、必要なら早めに受診しておきます。夜間に対応できる病院の連絡先も、家族全員が目に触れる場所に貼っておくと心強いです。

「もしも」を一枚の紙にまとめる

ここまでの内容は、家族の中で共有されていなければ意味が薄れます。おすすめは、A4一枚の「もしもメモ」をつくることです。書く項目は、犬の名前と特徴、ワクチン接種歴、持病と服薬、かかりつけ病院、預け先の連絡先、家族の連絡先、そして「迷子になったときに伝える一言」。冷蔵庫の扉か玄関の内側に貼っておけば、来客やシッターもすぐに把握できます。

経験のある方ほど、頭の中だけで段取りを済ませがちです。しかし、紙に書き出して家族で読み合わせる時間こそが、年末年始のいちばんの備えになります。迎えたばかりの保護犬と過ごす初めてのお正月は、静かで穏やかなものにしたいですね。

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