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親の家で犬を迎える前に——独身会社員が梅雨に考えたい「実家の終生飼養」という盲点

モフユイナ編集部
取材・文: モフユイナ編集部 清水 編集部員
監修: 認定獣医師・第一種動物取扱シェルター長
calendar_today2026.10.30 公開 | update2025.10.14 更新
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保護80日目の朝・リハビリ完了
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保護から40日目、初めて自らスタッフの膝の上に顎を乗せて甘えてくれた瞬間。極度の緊張が解け、瞳に穏やかな光が戻った(世田谷シェルター兼一時預かり宅にて)

「実家で犬を迎える」は親孝行のはずだったのに

梅雨に入る前、実家の母親から電話があった。「保護犬を迎えたい。あなたも犬が好きだったでしょう」。独身で一人暮らしをしている会社員の自分にとって、その言葉は少し嬉しくもあり、同時にひやりともした。帰省のたびに犬の話を聞き、写真を見せられ、週末には実家へ顔を出す。そんな日々を想像している自分がいた。

けれど、その想像には大きな抜けがあった。犬を世話するのは親で、私は「応援する側」のつもりだった。実際に起きたのは、梅雨のじめじめした時期に親が体調を崩し、犬の散歩と通院の予定が私に降りかかってくるという現実だ。犬は悪くない。親も悪くない。ただ、誰がいつ何を担うのかを決めていなかった。

この記事は、実家の終生飼養を「親が元気なうちに」具体化するための覚え書きだ。保護犬を迎えるかどうか迷っている独身会社員の視点から、健康管理と費用、そして万が一の引き取り先までを組み立てていく。

よくある誤解——「親が面倒を見る」を前提にすると崩れる三つの場面

誤解1:散歩は毎日続けられると考えてしまう

保護犬の多くは、環境の変化に敏感だ。梅雨の時期は床が滑りやすく、シニア犬や小型犬は歩くのを嫌がることもある。高齢の親が毎日雨の中を散歩させるのは、想像以上に負担が大きい。私の実家では、雨の日に散歩を省略した結果、犬が夜に落ち着かなくなり、親が寝不足になった。散歩は体力だけでなく、天候と精神面の両方で計画が必要だ。

誤解2:健康管理は獣医に任せれば安心だと思ってしまう

梅雨は皮膚トラブルや食欲低下が起きやすい季節だ。だが、高齢者が「少し元気がない」と気づいても、通院の予約や移動、支払いを一人でこなすのは大変になる。私が初めて気づいたのは、親のスマートフォンに通院予約のアプリが入っていないことだった。予約、薬の受け取り、記録の保管を誰がやるのかを最初に決めておかないと、気づけば犬の体重が落ちていた、という事態になりかねない。

誤解3:万が一のときは自分が引き取ればいいと考えてしまう

「何かあったら私が引き取る」という言葉は、口では簡単に言える。だが、自分の部屋がペット可かどうか、仕事の時間帯に世話ができるか、費用を持ち続けられるかは別問題だ。私自身、社宅のような借り上げ住宅に住んでいて、動物の飼育には管理会社への確認が必要だった。親の家の犬を迎える準備は、親の家の話をしているうちに、自分の生活の話になっていく。

梅雨の湿気と高齢犬——「見えない負担」を数値で確認する

梅雨の時期、実家の床は冷んやりと湿っていた。犬の寝床に置いたタオルは一日で湿り、臭いがこもる。高齢の親は「これくらい平気」と言うが、犬の関節や皮膚にとっては負担だ。除湿器を置く、床材を変える、寝床を高い位置に移すといった工夫が必要になるが、その家電の買い替えや設定を誰がやるのか。

私の場合は、梅雨入り前に実家へ行き、次の三つを一緒に確認した。

  • 犬の寝床の湿度がこもらないか、風通しのよい場所に移せるか
  • 雨の日の散歩の代わりに、室内でできる遊びを親が続けられるか
  • 通院が必要になったとき、タクシーや家族の送迎を誰が手配するか

これらは大げさな準備ではない。しかし、口頭で「気をつけて」と言うだけでは、梅雨の数週間で状況が変わる。数値や予定として書き出すことで、親も「これは自分だけでは難しい」と認めやすくなる。

終生飼養を続けるための「役割の見える化」——独身会社員ができる現実的な分担

覚書は家族の会話を記録する道具

終生飼養というと大層に聞こえるが、要は「最後まで世話をするための取り決め」だ。私はA4一枚の覚書を作った。犬の名前、迎えた日、かかりつけの動物病院、費用の分担、散歩の担当、そして「親が入院した場合の一時預かり先」を書いた。法的な効力はないが、家族が同じ紙を見て話すきっかけになる。

費用は「月ごとの固定費」と「突発費」に分ける

実家の犬の費用を、私は次のように分けた。フードや用品の月額、通院の積立、そして「もしものときの預かり費用」だ。独身の会社員にとって、実家の犬の費用を全額持つのは現実的ではない。親の年金から出す分、私が補助する分、兄弟がいるならその分担を、金額ではなく割合で決めておくと揉めにくい。梅雨の時期は通院が増えやすいので、この時期に一度見直すのがよい。

散歩と通院は「代替案」をセットで決める

雨の日に散歩ができないとき、室内でできる遊びを用意しておく。新聞紙を丸めたボール、段ボールのトンネル、においを嗅ぐ遊びなど、高齢の親でも無理なく続けられるものがいい。通院は、かかりつけの病院のほかに、夜間や休日に相談できる窓口を親のスマートフォンに登録しておく。実際に私が助かったのは、通院の付き添いを近所の家族に頼める関係を作っておいたことだった。

それでも迎えるなら——梅雨の前に確認したい三つの質問

保護犬を実家で迎えるかどうかを決める前に、家族で次の問いを共有してほしい。

  • 親が入院したとき、最初の一週間、犬の世話を誰がするのか
  • その一週間の費用を、誰がどのくらい負担するのか
  • 自分が引き取れない場合、次の受け入れ先をどこに相談するのか

これらの質問に答えられないまま迎えると、いざというときに犬が最短で困る。逆に、答えを紙に書いておけば、親も安心して犬を迎えられる。梅雨の雨音を聞きながら、家族で一度話し合ってみてほしい。犬を迎える準備は、犬のためだけでなく、家族のこれからの暮らしを整えることでもある。

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